アファンタジアについて現在わかっていること

普段、このブログではアファンタジアをポジティブに楽しむことを主としていますが、今回は真面目に、先日発表された研究報告、「A cognitive profile of multi-sensory imagery, memory and dreaming in aphantasia」などを基に、アファンタジアについての情報をまとめていきたいと思います。

アファンタジアとは

ほとんどの人にとって、視覚的イメージは生来の機能であり、認知プロセスをサポートする上で重要な役割を果たします。ただし、一部の個人は、自発的に視覚的イメージを完全に生成する能力を欠いています。これは「アファンタジア」と呼ばれる状態です。

Scientific Reports volume 10, Article number: 10022 (2020) 

 

歴史
  • 1880年
    フランシス・ゴルトンが行った精神的なイメージに関する統計的研究で初めて記述される
    ゴルトンは、彼の同輩の間で共通の現象としてそれを説明した。しかしながら、それは大部分が未調査のまま
  • 2005年
    エクセター大学のアダム・ゼーマン教授が、軽度な手術の副作用として視覚化能力を失ったと思われるある人物に接触する
  • 2010年
    その人物の事例を報告。ゼーマンは生涯において視覚化できなかったと訴える多くの人々からアプローチを受ける
  • 2015年
    ゼーマンの研究チームは、この状態を『先天性アファンタジア』と名付けた論文を発表した
    現在は単に『アファンタジア』の名で知られており、新たな関心を呼び起こしている
  • 2020年6月
    ニューサウスウェールズ大学の認知神経科学者アレクセイ・ドーズ氏らによる論文が発表される
    視覚的イメージのみでなく、他の感覚をイメージする能力が低下することも示唆される

アファンタジアの傾向

  • 頭の中でイメージを映像化することが難しい、あるいはまったくできない
  • 夜の夢を見る頻度が少なく不鮮明、あるいはまったく見ない
  • 視覚のみならず、聴覚、触覚、運動感覚、味覚、嗅覚、感情といった感覚においてイメージする能力が低下している
  • 全体として、イメージする能力が低く、個人差も大きいと思われる

著名人

様々な疑問

  • 遺伝的なものなのか、後天的になんらかの原因でイメージする能力を失うものなのか
    • そのどちらもが存在していた場合、それは同じものだと言えるのか?
    • 外科手術の副作用以外で、失う原因は?てんかんの発作?
    • 失ったものであれば、再び機能させることはできるのか?
    • 遺伝的なものだとしたら、必要のない機能を省いた進化であるとは言えないのか?
  • 感覚すべてのイメージ能力が低いのか
    • 視覚イメージの欠落は、アファンタジアの枝葉の部分に過ぎないのか?
    • すべての感覚の認知プロセスで視覚イメージが重要な役割を果たす為、アファンタジアを抱える人間は感覚をイメージする能力が低いのか?
    • 共感能力が低いとも言えるのか、サイコパス的傾向は?
  • アファンタジアのメリットは
    • 過去を記憶をイメージして再現する能力が低いのだとすれば、いわゆる「トラウマ」に対する耐性が強いのではないか?
    • 未来をイメージする能力が低いのだとすれば、躁鬱病にかかりにくいのではないか?
    • 視覚イメージを持たないことと引き換えに発達している能力が何かあるのではないか?
  • 『アファンタジアである人』の呼称をどうしよう
    • アファンタジア患者?アファンタジアン?アファンタジスタ?
    • このブログでは、ひとまずは「アファンタジア」と呼ぶことにします。

まとめ

以上のように、現在のところ、ほとんど何も解っておりません。

ほぼ唯一にして最大の進歩が、名前がついたことです。

これが本当に大きい。5年前まではぼんやりと「頭の中で映像をイメージをできない気がする」という具合にしか説明できなかったものを、「アファンタジアって知ってます?」から話を始めることができるだけで、大きな進歩です。また、「~病」とか「~症候群」ではなく、『アファンタジア Aphantasia』と、ちょっとオシャレっぽいキャッチーな名前にしてくれたことにも感謝です。ゼーマン先生、ありがとうございます!

現在、海外の大学で日々研究が進められているようです。日本でも、大阪電気通信大学の新関雅俊教授らが研究してくれています。新関教授の論文も、国会図書館から取り寄せて拝見することができました。やはり日本語で読めるって素晴らしい!日本人に適したアファンタジア診断方法を考えてくれています。

私にできることは研究者の方々に期待と感謝をすることだけですが、陰ながら応援しております。

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